「次に何を作ろうか」
個人開発者なら、誰もが一度は立ち止まる問いではないでしょうか。
私はVJ-CONNECTという屋号で、10年以上にわたって個人アプリ開発を続けてきました。リリースしてきたアプリは10本以上。その経験を通じて確信していることがあります。
それは「個人開発において、技術力よりもはるかに重要なのは『何を作るか』を決める力」だということです。
今回の記事では、私自身の失敗と成功を交えながら、「インストールされて、かつ収益化につながるアプリの選び方」について書いていきます。
これまで作ってきたアプリたちと、初期の失敗

まずは私がこれまでにリリースしてきた主なアプリを並べてみます。
- PocketTune(Android/iOS):チップチューン(8bit音楽)制作に特化したトラッカーアプリ
- Dottie(Android):スマホで本格ピクセルアートが描けるドット絵エディタ
- Vietie(Android):ベトナム語学習アプリ
- 瞬トレ(Android):瞬間英作文の練習アプリ
これらは比較的成果が出ているアプリたちです。一方、個人開発を始めたばかりの頃はこんなものも作っていました。
「便利そう」「需要ありそう」と思って作ったのですが、結論から言うと ほとんどインストールされませんでした。
「適当に作ったアプリ」はインストールされない
初期のアプリたちが伸びなかった理由は、はっきりしています。
「何を作るかを真剣に考えていなかった」からです。
技術の勉強がてら、思いついたものを思いついたまま実装していました。「ポモドーロタイマーは便利だから、誰か使ってくれるだろう」くらいの感覚です。
しかし当然のことながら、ポモドーロタイマーやQRリーダーはストアに腐るほど存在します。後発の、しかも個人開発の無名アプリを、ユーザーがあえて選ぶ理由はどこにもありません。
ここから私は1つの結論にたどり着きました。
実際に「作る時間」よりも、「何を作るか」を考える時間にこそ価値がある。
個人開発のリソースは限られています。何を作るかを間違えれば、その後に費やす数百時間の実装はすべて無駄になります。逆に、何を作るかを正しく選べれば、シンプルな実装でもユーザーに届きます。
私が絞っているジャンル:「ツール系」と「学習系」
その上で、私が個人開発のジャンルとして絞っているのは2つです。
- ツール系:特定の課題を解決するための道具系アプリ
- 学習系:学習・スキル習得を支援するアプリ
この2ジャンルに絞っている理由はシンプルで、
- 課題解決型なので、ユーザーが「お金を払ってでも使いたい」と思いやすい
- 長期的に使われる(エンタメ系のように飽きられにくい)
- 個人開発でも、品質とこだわりで勝負しやすい
もちろんエンタメ系やSNS系のアプリで成功している個人開発者もいますが、私自身はこの2ジャンルが収益化と相性が良いと判断しています。
なぜ「なんでもできる系」のアプリは作らないのか
ジャンルを絞ったうえで、さらに重要なのが「ニッチに振り切る」ということです。
例えば「英語学習の総合アプリを作ろう」と考えたとします。
単語、文法、リスニング、スピーキング、すべて入りの欲張りなアプリ。一見、魅力的に聞こえます。
しかしこれは、個人開発者が手を出してはいけない領域です。
なぜなら、「Duolingoでいいじゃん」で終わってしまうから。
英語学習の総合アプリは、巨大資本を持つ企業が数百人規模の開発チームで何年もかけて作っています。個人開発でそこに真っ向勝負を挑んでも、勝ち目はありません。
では、どうするか?
答えは「何かに特化する」です。
同じ英語学習でも、たとえば「瞬間英作文だけに特化する」「シャドーイングだけに特化する」「医療英単語だけに特化する」といった具合に、機能や対象を絞り込んでいきます。総合系では大手に届きませんが、特化型ならまだ個人開発者が戦える領域があります。
ニッチ戦略がハマった事例:PocketTune
このニッチ戦略がうまくハマったのが、私のアプリ「PocketTune」です。
PocketTuneは、チップチューン(ファミコン風の8bit音楽)に特化したトラッカーアプリ。「音楽制作アプリを作る」のではなく、「チップチューンしか作れない音楽制作アプリ」という、極めて狭い領域に絞り込んでいます。
ニッチに振り切ったからこそ、競合がほとんど存在しません。その結果、
- 検索からの自然流入だけで、継続的にインストールされる
- レビュー評価も高い
- 海外ユーザーからの利用も多い
広告費をかけなくても、ASOと検索流入だけで着実にユーザーが増えていく。これがニッチ戦略の威力です。
インストール ≠ 収益化、という落とし穴
ただし、ここで話が終わらないのが個人開発の難しいところ。
「インストールされる = 収益が出る」ではないのです。
ジャンルによっては、「無料で使うのが当たり前」という世界もあります。たとえばシンプルなタイマーアプリで、ユーザーに月額500円を払ってもらうのはかなり難しいでしょう。
つまり、ジャンルを大きく分けると
- インストールはされるが、収益化が難しいジャンル
- インストールはされにくいが、収益化はしやすいジャンル
- インストールされて、なおかつ収益化もしやすいジャンル
の3パターンがあり、当然ながら個人開発者が狙うべきは3つ目のゾーンです。
個人開発で勝つための「2つの軸」

ここまでをまとめると、個人開発で「稼げるアプリ」を作るには、2つの軸でアイデアを評価する必要があります。
軸①:特化していて、なおかつユーザー需要がある
- ジャンルを絞り、ニッチに振り切る
- 大手と真っ向勝負しない領域を選ぶ
- ただし、需要が完全にゼロの領域は避ける(誰のためのアプリか、を明確にできること)
軸②:収益化につなげやすい
- ユーザーがお金を払う動機がある(課題解決度が高い、業務効率に直結する、など)
- 「無料が当たり前」ではないジャンルである
- 課金モデル(買い切り、サブスク、広告)と相性が良い
この2軸を同時に満たすアプリ案を見つけることが、個人開発の最初の山場であり、もっとも頭を使うフェーズです。
おわりに:何を作るかを考えること自体が、個人開発の醍醐味
「何を作るか」を考えるのは、正直しんどい作業です。
ノートを開いて、ジャンルを書き出して、競合を調べて、ユーザー像を考えて、収益化までの道筋を描いて……。
コードを書いている方が、圧倒的に楽しい瞬間も多いです。
でも、この「考える時間」を惜しんで作ったアプリは、結局誰にも届きません。
逆に、ここでしっかり考えて、自分なりの「2軸」を満たすアイデアにたどり着けたとき、個人開発は最高に面白くなります。1人で作っているのに、ユーザーが現れて、レビューがついて、収益が立つ。これは個人開発の規模だからこそ味わえる感動です。
私自身も、今まさにこの「何を作るか」を考え続けている最中です。
一緒に頑張りましょう。
VJ-CONNECTでは、個人アプリ開発に関する情報やリリース体験談を発信しています。気になった方は、ぜひ他の記事もチェックしてみてください。
